東日本大震災後3年を経たわが国では、東北被災地での復興の促進はもとより、内外に多大な課題を抱えています。このなかで、とくに、エネルギー、防災、気候変動対策などにおける地方の役割、市民と行政の連携強化の重要性、縦割りの弊害を乗り越える横断的な取り組みの重要性などが、ますます浮かび上がってきています。
一方で、平成の大合併後、広域化した自治体のガバナンスを再構築する課題も全国的に顕在化しています。21 世紀をタフに生き延びることのできる国を作るためには、地域における直近の課題を解決しつつ、中長期の確かな展望をもって、行政と市民・各ステークホルダーの建設的かつ横断的な連携体制を構築し、新しい人材を育成し、エネルギー自給力を高めるとともに、異常気象に耐える国土の強靭化を進め、新しい時代を開拓する力量をもった産業を育成し、持続可能な地域を全国に広げていくことが重要であります。そこでは、行政手法においても、また、学術研究の方法においても、社会のステークホルダーとともに問題を考え、ともに進化(共‐進化)していくという、新しいスタイルを実現することが不可欠となっており、横断的で創造的な協働の実現が求められています。
しかし、これまで、わが国には、多様に連関する地域や地方の、新しい時代における未開拓の課題を、中長期的視野の下で、創造的かつ横断的に解決するための仕組みが欠けていました。今必要なことは、持続型社会に向けた中長期的展望のもとに、分野横断・問題解決型の創発的な地域づくりを進める自治体-市民-産業―学術の連携を進めることです。
2008 年以来5 年間にわたり、私どもが関わった独立行政法人科学技術振興機構・社会技術研究開発センターの「地域に根ざした脱温暖化・環境共生社会」研究開発領域におきましては、合計16 のプロジェクトが実施されました。この中から私たちは、「これからの数十年にわたる各種の危機のなかでも、最も重大な危機は地球温暖化と大規模な気候変動であり、それに対する取組みは、大都市への過度の集中・画一化というこれまでの文化を作り直す視点に立ち、地域にある自然資源を生かし、地域を元気にする取組みとして追及されるとき、はじめて本格的なものになる」、という確信を得るとともに、多様な成果を挙げてまいりました。ただし、諸成果の本格的・統合的な実現、すなわち地域実装はこれからの課題であります。同領域終了後は、戦略提言『地域が元気になる脱温暖化社会を!―環境・エネルギー分野の課題解決に社会技術的な手法を導入しよう―』を基軸として、環境関連の行政や学術研究にとどまらす、多分野横断型、多世代参加型の創発的な地域づくりに、全国の皆様とともに取り組んでいきたいと考えてまいりました。折しも、問題意識をともにする自治体関係者、研究者、地域関係者をはじめ、全国の皆さまから、新たな協働を推進する新組織の必要性や意義等についてのご指摘をいただきました。
そこで、このたび、私どもは以下のような事業を進めるため、一般社団法人「創発的地域づくり・連携推進センター」を創設致しました。
主な事業
- 持久力と自律性のある長期持続型の地域構築のための、分野横断型研修
(対象:行政、地域事業者、地域住民、NPO、コンサルタント、メーカー、研究者、教育関係者、学生等)
テーマ例:自然エネルギー、環境エネルギー・制度設計、地域経済活性化・域学連携、持続型のまちづくり、子育て・健康・医療支援、被災地復興、北海道再生等」 - 創発的地域づくりのためのデータプラットフォームの開発と運営
- 地域の再エネ・省エネ・環境・金融計画等作成に関する支援事業
- その他、地域と大学等を繋ぐ連携促進事業
役員
代表理事:
堀口健治 早稲田大学名誉教授・元副総長
特別顧問(理事):
堀尾正靱 東京農工大名誉教授・龍谷大学教授
理事:
宝田恭之 群馬大学理工学研究院教授
岡田久典 早稲田大学環境総合研究センター上級研究員
谷口信雄 一般社団法人えねべん~地域のエネルギー転換に参画する弁護士の会~顧問
宇高史昭 NPO 法人木野環境シニアカウンセラー
亀山秀雄 東京農工大学大学院MOT 教授
監事
永井祐二 早稲田大学環境総合研究センター主任研究員